2009/10/27

三カ月あまりで唇にも飽きる




本多孝好と出会ったのは、高校の頃だったろうか。
近所の書店に並ぶ「FINE DAYS」の帯に惹かれてハードカバーを手に取ったのが最初だったと記憶している。
短編集とは知らずに読み始め、ミステリともラブストーリーとも言える不思議な物語の構成に自然とひきこまれていった。4本の短編からなるこの本、中でも群を抜いて好きなのが「眠りのための暖かな場所」だ。

ある大学の法学部で院生として助手をつとめる主人公は、こどもの頃に妹を「殺した」。その事から、人との接触を避け、幸せから遠ざかるように生活してきた主人公。一瞬でも主人公が幸せを感じた時、まるで呪いのように妹の声がそっと囁く。
「おねえちゃん、楽しい?」
勿論それは主人公の思い込みでしかない。だがそれは確実に彼女の精神を蝕んでいた。
星空を見上げるのが恐ろしい主人公。彼女は言う。
「死んだ人は、星になる。
だから、宇宙はどんどん広がっていく。死んだ人の星の空間を作るために。」

更に結城ツトムの登場で、物語は展開していく。
ある種ホラーのような何とも薄ら寒い結末の中に、どこか温かみのある話だ。
彼の物語には「死」に纏わるものが多いのだが、それでも所謂「お涙頂戴」ものではなく、残された者の強かさだとか、再生を描いている気がする。彼の生死観は嫌いじゃない。だからこんなに読めるのかなとも思う。



昨日、本多孝好の新作、「MOMENT」の続編「WILL」が発売になったようだ。好きになった作家の作品は大体遡って読む。そんなある種のコレクター精神があるので、勿論私も「MOMENT」は既に読んだ。簡潔に言うと、病院でアルバイトをする主人公が、末期がん患者の願いを叶えていく話だ。読みたくて仕方がなかったのだが、今は手元に「つんどく」状態の本がかなりあるので購入は諦めた。また時間が出来たら年末にでもゆっくり読みたいものだ。

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