2009/05/28
戦争、そして宇宙
ガイナックス作品の最終話のタイトルはすべてSF小説から来ている―…天元突破グレンラガンの脚本家、中島かずきもそれに倣い、選ばれたのがこの作品。フレドリック・ブラウンの「天の光はすべて星(THE LIIGHTS IN THE SKY ARE STARS)」である。美しいタイトルだ。1953年に発表されたこの作品は、グレンラガンの最終話が放映された後、文庫版が発売されていなかった為にプレミアが付き、値段がどんどんと跳ね上がってしまった。そこで昨年新たに新装版として、中島氏の解説付きで再販されるに至った。
物語の舞台は1997年から2001年。勿論書かれたのは1953年なので、齟齬が生じるが、なかなか面白い。主人公の元宇宙飛行士マックス・アンドルーズは、星に魅了され57歳にして再び宇宙を目指す。木星探査計画を公約に立候補した女性上院議員候補のエレンとの出会い、そして別れ。ネタバレ覚悟で申し上げるが、エレンが病床に伏した時、マックスが彼女に語りかけるシーンが最も印象的である。1953年といえば、第二次世界大戦の終結から僅か8年。未曾有の脅威を振るう原子爆弾という史上最悪の兵器の登場に、開発国であるアメリカの人間であるフレドリック自身も戸惑いを隠せなかったに違いない。彼は何度か作中に原子爆弾の話を挙げている。マックスは床に伏すエレンに語りかける。「原爆による皆殺しの戦争の影におびえながら育った。だがわたしには、それが嬉しいことのようにさえ思われた。人間がそういうことからくる恐怖に駆り立てられて、やむをえず星に向かって出発せざるをえなくなるというのなら。」
科学者が世界を滅ぼす。
そんな言葉を耳にしたことがある。
結局戦争を作るのは一部の政治家と、科学者なのだ。
だが科学は兵器を作るためだけに存在するわけではない。きっと、もっと素晴らしいことのために存在する。それはたとえば、我々がまだ見ることのない、他の星々への到達のような。
新装版のカバーはご覧の通り、空へ向かうロケットと、それを寄り添うように眺める二人の人間が描かれている。全てを読み終え、再びカバーに戻った時、どこか感慨深いものがあった。
宇宙にとりつかれ、それを追い続けること。無限に広がる闇は広大で、恐ろしくもあるけれど、我々にいつか光の速さを超えられる時が来たのなら、世界はきっともっと広くなるだろう。
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雑記
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